ある小さな町に、二人の若い旅人がやってきました。

 一人は黒髪の少年、もう一人はその少年よりも幼い、空色の髪の少女でした。

 その旅人たちは、町の人に温かい歓迎を受けました。その日は、彼らの宿もすぐに決まりました。

 

 次の日、旅人たちは町を見て回ります。少女が嬉しそうにはしゃいでいました。

 それを横目で見ながら、少年も観光気分を味わいます。

 町の広場までやってきました。その時、彼は見つけます。広場の中心に置かれた、ひとつの銅像を。

「これは……」

「どうかしたのー?」

 少年が呟いて銅像に近づくと、少女もその後を追って近づいてきます。二人で銅像を眺めました。

 ライオンのようにも見える獣の形をした像でした。ただ、ライオンとは違うところもあります。頭に、大きな角が生えているところです。二人は、その不思議な生き物を模した銅像を、不思議そうに眺めていました。

 そこに、偶然町の人が通りかかります。そこで少年は、この銅像は何かと訊いてみました。町の人は答えます。

「ああ。これは幻獣の銅像だよ」

『――幻獣?』

 彼の口から出てきた単語に、二人は首をかしげます。町の人が説明してくれました。

「そうさ。幻獣族の中の、今はもうなき部族なんだ。彼らは昔、盗賊の襲来が続いていたこの町を救ってくれたんだ」

「なるほど。だからこうやって銅像が建てられているわけですか」

 話を聞いて、少年は感心したように銅像を見上げました。

 続いて、少女の方が「"えいゆう"ってやつかなあ?」と笑顔で言います。町の人は、「まあ、そんなとこ」と苦笑して答えてから、少年と同じように銅像を見上げて、続けます。

「そんなこともあってか、この町では幻獣族の血が入っている者たちをたたえるような風習があるんだ。一般的には忌み嫌われている彼らだけど、いいところもあるんだよ」

「そーなんだー」

「……………」

 少女は笑顔でそう言いましたが、少年は何も言わず、ただ黙って銅像を見上げていました。

 

 

 数日後。二人はたくさんの人達に見送られて町を出ました。次の町に行くまでは数日かかるので、この日の夜は道端で野営です。

 薪となる木を集めたりしながら、二人はこの場所で眠るための準備をしていました。その時、少女が思い出したように少年に尋ねます。

「ねえ」

「ん? なんだ?」

「あの町に住もうとか、思わなかった? いいところっぽかったよ。何より――」

「虐げられない?」

 少年が少女の言葉を遮って言うと、少女は人差し指をぴん、と立てて「そうそう!」と言いました。少年は微笑んで、持っていた木の枝をその場に下ろすと、自分もそこに座り込みます。そして、呟くように言いました。

「確かにそうかもしれないけど、住もうとは思わなかったな」

 少女が「どうして?」と訊くと、少年はため息をついてこう言いました。

 

「勝手に崇め、称えられても、こっちは疲れるんだよ。虐げられた時と同じくらい、ね」

 

 

 

 

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獣の銅像